SPECIAL 2018.03.30

駒澤大学として今、あらためて「禅」と向き合う

 駒澤大学の建学の理念は、「仏教の教義と曹洞宗立宗の精神」である。420年以上の歴史を有する駒澤大学では、仏教学部等を中心に仏教ないし禅に関する研究を深め、その学問的成果を積み重ねてきた。殊に禅に関しては、曹洞宗の大本山永平寺並びに大本山總持寺との密接な連携を保ち、高祖道元禅師、太祖瑩山禅師の両祖に関する研究ばかりでなく、その淵源の研究やその実践としての坐禅も連綿と行われてきた。

 そして現在私たちは、分業化の徹底、科学技術の革命的進歩等によって多くの利益を得つつも、その反面として、分断され表層的な人間関係の中に生存せざるを得ない世界に住むことになった。物質社会は高度化しても、精神世界は逆に貧困になったのではないかと言われる由縁である。多くの人は興奮と落胆、希望と失望のあざなえる縄の中で、案外、寂しい孤独を味わいつつ、「人間とは何か」「自分とは誰か」と自問しているのではないだろうか。

 そのような時、禅は全世界から注目されることとなる。東洋の神秘、日本の美しき文化として認識され、宗教家や研究者だけでなく、実業家、教育者、医師、スポーツマンなどの関心の的になり、様々な様式やアレンジ、変形等が行われ、数限りない効用が喧伝されている。その効用に関しては心理学や医科学、経営学や人間学など、多様な学問が科学的に分析を行ってきた。また最近では、具体的な効用の例として有名人の伝記等で紹介されることも多く、巷間に好意的に受け入れられている。

 このような状況を背景にして、1592年を淵源とする歴史と伝統を有する駒澤大学としては「今、何を行うべきか」と考える。そして、黙してただ研究と実践に没頭するにとどまらず、禅に関する本来的研究と同時に学際的研究を行うことを通して、あらためて禅と向き合い、発信すべき期待と責任を強く認識する。これを機に、駒澤大学は、禅研究の世界的拠点としても、広範多岐にわたる活動を、積極的に展開したいと考える。幸い、駒澤大学は、学際的国際的活動を現実化できる、理系文系の多くの優秀な学者が集う知の拠点でもある。駒澤大学が全学一体となって、駒澤大学のブランドとして「禅」、さらには国際的なメッセージとして「ZEN, KOMAZAWA, 1592」をここに高らかに掲げたいと思う。

学長 長谷部 八朗

ALL LIST