禅の歴史 ― 曹洞禅の源流を尋ねて(4)
鏡島元隆博士「禅学概論講義ノ-ト」より
第二章 仏教の展開と禅
前に述べたように、仏教における禅は、その起源はインド古来の修行に基づくものであるが、釈尊によって仏教の修行に取り入れられたものであって、仏教に取り入れられた後の禅と、他の宗教の禅とは、異なった意味をもつものである。
仏教において禅がいかに重要な意味をもつかは、釈尊が悟りを開かれたのはこの坐禅によるのであり、また、この悟られた真理を弟子たちに説かれる場合も禅定に入った後に示されたことによって解る。したがって、坐禅は仏教において最も大切な修行であるが、同じ仏教における坐禅であっても、仏教が2500年の歴史を通じてインドから中国、日本へ伝わるにしたがって、その内容にも思想史的展開が生まれたのである。
すなわち、インドにおける仏教は原始仏教(げんしぶっきょう)、部派仏教(ぶはぶっきょう)、大乗仏教(だいじょうぶっきょう)と展開したが、それにともなって仏教の修行である坐禅も原始仏教的禅、部派仏教的禅、大乗仏教的禅として、その内容が展開したのである。
原始仏教とは釈尊およびその弟子たちを中心とする時代の仏教である。この時代においては、釈尊は仏教の真理の生きた証人であって、弟子たちは疑問点があれば、その都度、釈尊から教えを受けることができた。弟子たちはまず釈尊の定められた戒律を守ることによってその身体を整え、次に禅定を修行することによってその精神を整え、その後に、仏教の理想である真実の智慧を得ることができたのである。この時代においては、仏教の理想である涅槃(ねはん)は現世において達することのできるものである。それゆえに坐禅の修行は現世において、涅槃に達する方法として修行されたのである。
(つづく)
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