STUDY 源流 2020.08.04

禅の歴史 ― 曹洞禅の源流を尋ねて(21)

鏡島元隆博士「禅学概論講義ノ-ト」より

第8章 中国禅の変遷 

 禅宗が中国仏教界において、その全盛を誇ったのは、唐(618-907)から宋(960-1279)の時代にかけてである。禅宗の特色である「不立文字、教外別伝」(ふりゅうもんじ、きょうげべつでん)とか、あるいは逆説的な問答、あるいは直接行動をもって禅の教えを示すことは、すべて唐・宋の時代の禅について言われるのである。
 この時代の禅宗界には、多くのすぐれた人物が出て、禅は中国仏教界をリ-ドしたのである。それはただ仏教界をリ-ドしただけでなく、一般社会にも浸透し、中国の文化に深い影響を及ぼした。
 宋代においては、禅は絵画・彫刻・書道などの芸術に対して独特な影響を及ぼしたが、儒教、特に朱子学の勃興にも影響を与えた。それがために、唐から宋へかけては、禅は文字通り黄金時代を築いたのである。しかし、このように全盛を誇った禅も、元から明の時代に至ると、次第に変化し、衰えるに至った。それは元以後の中国においては、浄土教が次第に盛んとなったからである。
 ところで、始めは禅と浄土教の二宗が並んで行われたが、後には禅と浄土教が合流して、念仏禅(ねんぶつぜん)が唱えられるに至ったのである。この念仏禅は始めは勢いはなかったが、後にはついにこの系統が禅と念仏を吸収して中国仏教界の主流を占めるに至った。
 中国においては、多くの仏教宗派が生まれたが、結局、後の時代まで残ったのは、禅と念仏であった。しかも、この二つの宗派が、中国においては別々の宗派として存在しないで、これが合流して念仏禅という一宗派をつくり上げたのである。

(つづく)

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